2024/10/11

変体仮名の「八」由来「は」と「和」由来「わ」の区別について

 みんなで翻刻プロジェクトで

1.増補頭書訓蒙図彙大成(東京学芸大学「学びと遊びの歴史」)

https://honkoku.org/app/#/projects/gakugei/collections/6F7BB6F72D9AE0F2E2CD256197A03A67

を翻刻中。(線が太く不鮮明気味)


この際

変体仮名の「八」由来「は」と「和」由来「わ」の区別が問題になりました。

このことに関して考察します。

ちなみに国立国語研究所の学術情報交換用変体仮名のサイトによると

https://cid.ninjal.ac.jp/kana/

「は」の変体仮名は



「わ」の変体仮名は


論点は

「は」「」と「わ」「」の区別です。


茨木様 たつ様の区別方法です。

茨木様

筆記体で連綿して書かれた「ハ」と、「ワ」の区別には悩ましいものが有ります。ワの字母は「和」で仮名、片仮名のどちらでも使用されています。当方は『増補頭書訓蒙図彙大成 10巻 2:巻之1-3』コマ9で述べたような方法と正しい仮名遣いを参考にして判断しております。16行目の「官」は私には「わ(ワ)」に見えます。一画目から横に線が水平に書かれ、そこで筆を置かず左下に廻している形だからです。この形には迷うことはありませんでした。

「まじはり」は2行目の振り仮名「まじわり」の「ワ」と同じで、正しい歴史的仮名遣いは「まじはり」なのですが、この時代は仮名遣いの乱れが生じていて混用しています。判断の根拠は人それぞれだすが私は「ハ」は二画目に筆の力が乗っていれば「は」と判断し1行目のように一画目からフワッと筆を回した感じであれば「ワ」と判断していますが、作者の書き癖があったりしてそれだけが絶対とは言えず他の要素も考えに入れる必要がある時もあります。それが悩ましいのですよね。


たつ様

私の「は(八)」と「わ(和)」の判別方法。2画目が1画目の下部から2画目の上部へ右上がりに流れていれば「は(八)」。2画目が1画目の上半部から横に流れていれば「わ(和)」。9 ,16行目の「官」は「ぐはん」に見えます。なお、「官」は「くわん」が正しく「くはん」は誤り等の正誤は関知しません。誤りであっても誤りのままに翻刻し、必要があれば、誤りの内容を【注記】します。


比較資料として以下の資料も使います。

2.頭書増補訓蒙図彙大成(国立国会図書館デジタルコレクション)

https://dl.ndl.go.jp/pid/2556823/1/

  翻刻の線が細く鮮明である

3.頭書増補訓蒙図彙(国立公文書館デジタルアーカイブ)

https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F1000000000000037253&ID=M2018061514504047803&TYPE=

  線が若干太く不鮮明気味

4.近世期絵入百科事典データベース(国際日本文化研究センター)

 https://kutsukake.nichibun.ac.jp/EHJ/

  各種絵入刊本をデータベース化し絵を検索でき、翻刻もある


資料1の中から、「は」と「わ」を抽出してみます。

助詞の「は」には使われている例がほとんどである

 「わ」は「王」からのほとんどです


問題になるのは、

漢字の正しい振り仮名では「わ」であるはずのものに

」に近い形のものが散見することである。  

例 辞書の表記 ( )内は翻刻

「官」 

くわん 


(ん?)





 

 

くわん 

(ん?)



 

 

くわ 

(く

明らかに「は」





 

 

くわう 

(う?)



 

 

 

「わ」の例では和の変体仮名を使った例はない 

 
















 「童」は「わらは」だが「はらわ」と読んでいる。

この時「わ」は「王」の崩し

 























 

「和」の崩しに似ているが「わ」とは読めず「は」としか読めない例 

 

はう





  

これらを勘案するとの形のものは全て「は」と判断して良いかと推察します。