2012年11月27日
1.
韓国語の母音には長短があるけれど、ハングルでは表記されません。
(ここでは母音の長音を:を付けて表します)
最近は、若者の間にも長短を区別しない傾向があるようです。
私も韓国語をいままで勉強してきて、漢字音の長短にはそれほど気を使っていませんでした。
ですが、辞書を見ると長短が表示されています。
固有語では말:(ma:l,言葉)と 말(mal,馬)の例が有名です。
漢字音の長短は今までほとんど気にしていなかったのですが、以下の例のような長短で区別例があるようです。
(1) 기:술(技術)と 기술(奇術)
また、시:작(始作)などは、最初を短く「シジャク」と発音してしまうと、変な発音になるようです。
また韓国の漢字力検定試験では漢字音の長短を問う問題が出されます。
たとえば 第58回3級の問題です。
(2)次の漢字語中最初の音節が長音で発音されるものの番号を書きなさい。
㉠ 借入 ㉡ 溫柔 ㉢ 睡眠 ㉣ 侮笑 ㉤ 路幅 ㉥ 軌跡
㉦ 尋訪 ㉧ 含量 ㉨ 廢止 ㉩ 蓄財
解答欄から見ると4つ正解があります。
こんな問題があることからも、漢字音の長短を読み分けることは必要な知識のようです。
2.
漢字の長短の区別なんて難しいと思っていました、まったくでたらめではなく、それなりの歴史的な変遷の結果です。
現代のソウル方言には、アクセントがありませんが、中期朝鮮語にはアクセントがありました。
各音節に平声(低い音)、去声(高い音)、上声(低から高くなる上昇調なので長めの発音となる)の3つの音調がありました。
現在のソウル方言ではアクセントはなくなってしまったのですが、上声の長い音節は長音となって残りました。それが、現在の漢字音の長音とかなり一致します。つまり、漢字音の長短は、熟語によるのではなく、個々の漢字自体で決まります。
*
ただし、長音となるのは単語の1音節目だけです。
例をあげます。
最初にあげた例の
기:술(技術)と 기술(奇術)
実は「技」は上声の漢字で、「奇」は平声です。ですので、「技」は長く発音され、「奇」は短く発音されるということになります。
この2つの漢字で始まる他の単語を辞書で調べてみると
「技」で始まる単語はすべて長音です。
(3)技工(기:공)技手(기:수)、技師(기:사)、技法(기:법)、技監(기:감)
それに対して、「奇」で始まる単語はすべて短音です。
(4)奇奇(기기)、奇論(기론)、奇計(기계)、奇傑(기걸)
次の기の音の漢字については、
(5) 「妓」・「棄」(上声)
この漢字で始まる単語、妓生(기:생) 棄恩(기:은)などはすべて長音です。
(6) 「機」・「期」(平声)、「起」・「記」(去声)で始まる単語
上声でない(6)の漢字で始まる単語 機械、期間、起工、などはすべて短音の기です。
これ以外でも思いついた漢字について調べてみるとほとんど当てはまります。
結論として、
(7)漢字語の第一音節での母音の長短は個々の漢字ごとにより決まっている。(わずかの例外はあります)
ということができます。ですから長く発音する漢字なら、その漢字で始まる単語はすべて長く、短い漢字ならその漢字で始まる単語はすべて短く発音すると予想することができます。若干の例外はありますが非常によくあてはまる法則です。本当は、中期朝鮮語での、その漢字が上声かそうでないかの知識があれば、どの漢字が長音になるかどうか判断できるのですが、ちょっといまでは無理ですね。
練習
1、「통」で始まる漢字について確認してみます。
統、痛 は上声です。
通 は平声です。
統一、統制、統治、統合、痛恨、痛症 の第一音節はすべて長音「통:」です。
通信、通信、通貨、通學、通帳 の第一音節はすべて短音「통」です。
2、開管(개관)、皆勤(개근)、概観(개:관)、改過(개:과)の発音から、次の単語の第一音節の長短も判断できます。
開坑、改教、開國、開校式、皆既、概念、皆無、開門